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zoom RSS ギリシャ総選挙後のユーロの行方

<<   作成日時 : 2012/07/10 09:15   >>

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 ギリシャ総選挙はユーロ残留を国民が選択して、とりあえずは財政再建努力とそれに伴う改革を続けることを是とする政権が確立しました。その後のEUサミット首脳会議でも、財政悪化国に対する様々なセーフティネットの強化が確認され、併せて財政規律一辺倒ではなく、経済成長を支える施策としての金融緩和などによる意思表示もあって、ユーロ崩壊という最悪のシナリオは当面回避されました。

 無論ユーロ問題は決して解決したわけではありません。目先の動揺が収まったに過ぎず、ユーロの主役たるドイツもフランスも、これからが本物のユーロ統一に向けた険しい道のりです。そして今回の混乱によって再認識されたこと、それはユーロ唯一の勝ち組であるドイツにとっても、ユーロ崩壊で被る犠牲は甚大であり、もはやルビコン川を渡ってしまった(統一ユーロを始めてしまった)以上、これを最終目標に向けて改革し続けて行くしか現実的選択肢はないのだという事実です。

 共通通貨ユーロの導入によって、交易を自由にして経済活動の市場規模を拡大させようとの試みは、20世紀の帝国主義的価値観ならば戦争による侵略で実行していたであろうことを、平和に共存共栄を目指して実現させようとの、新たなる21世紀パラダイムに根ざした挑戦です。

 しかし統一ユーロがスタートしてから未だ10年ちょっと、米国の覇権への対抗という政治的イデオロギーが先行して、構造的問題点に敢えて目をつぶり、その拡大を急ぎ過ぎたことが今回のユーロ危機を招きました。そして経済格差があまりに大きく、地理的にも隔離したギリシャからその歪みが噴出するのは、後講釈ですが必然だったと言えましょう。

 さて小難しいことはさておき、これからの大陸欧州の行方を占っていきましょう。これまで10数年糊塗されてきたユーロ構造の欠陥は顕わになっていますので、もはやどの国も同一条件・同一金利で国債発行出来るといった、元の平穏で能天気なユーロに戻ることはあり得ません。むしろ放漫財政と低労働効率の南欧諸国が引き続き高い調達コストを求められるのは、市場の正しく健全な姿でありましょう。

 ですからこれらの国々は厳しい財政再建と構造改革への努力を続けることによって労働生産性を引き上げ、資本効率が独仏並みにキャッチアップするまで苦闘を強いられ、同時にその間に独仏は財政支援という負担を続けざるを得ないということです。

 どの国にとってもこれからが本当の苦しい道のりでしょう。それを乗り越えた先に、欧州共同債という同一条件での資金調達の復活があり、更には統一財務省を有する大欧州連邦へのロードマップが描けてくるのです。これは戦争によらぬ、壮大なる統合への挑戦であり、侵略と殺戮に明け暮れた国家同士の競争が新たな正義で結び付く、人類の叡智による大進歩なのです。

 ところがこうした厳しい道程をすべての国が乗り越えられるとも思えません。とするとユーロ離脱というプログラムも、おそらく整備されていくのではないでしょうか。再びギリシャのように駄々をこねる国があれば整然とユーロから脱落させることが、経済学的見地からは理にかなっています。そこでギリシャはやがてユーロから離脱し、ドラクマへ戻ることで弱い通貨によって或いはデフォルトすることで、経済を立て直すことを選択して行く、そうした淘汰が大欧州連邦への実現には不可欠なことでもありましょう。護送船団方式の現在の枠組みが取り払われれば、ドイツやフランスなど強い経済にとってはやはり統一ユーロは有意義な制度です。

 長期投資家は海外を見る時、その国や地域に住む人たちの立場になって、歴史的背景や彼らが目指す意図を感じ取ることがとても大切なのです。

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中野 晴啓
セゾン投信株式会社
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