統一ユーロの大矛盾

ギリシャが世界的市場混乱の引き金になるというシナリオは大きく後退して、欧州債務危機はひとまず一服の小康状態に入りました。
欧州連合(EU)は金融安全網を8千億ユーロまで拡大させて、資金調達が困難になった国への緊急融資枠として資金融通出来る基金が、ある程度の処までは確保されたわけです。
それでもPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)と言われる財政悪化国は決して安心を得たわけではなく、これらの国々はいずれもこれから厳しい財政再建に向けた歳出削減と増税によって国民生活は窮乏を強いられ、当面経済は停滞せざるを得ないでしょう。

何しろ経済力も財務健全性も大きく異なる国々が、エイヤ!で同じ通貨を使うことにしたのですから、本来やれるべき金融政策や自然と淘汰されるはずの市場浄化作用を機能させることが出来ないのです。

たとえばギリシャのように、放漫財政で身の丈を超える借金を背負ってしまった国の場合、信用力の低下からその国の通貨は大きく売り込まれ、急激なインフレへとシフトされます。インフレが進めば進むほど、自国通貨ベースの債務は軽くなって行く、それはイコール国民が貧しくなる分だけ国家に富が移転される現象です。同時に通貨安は対外輸出面では大きな恩恵を受けて、経済活動が元気を取り戻してくる、といったストーリーが描けるのですが、ユーロという統一通貨を使っている以上、こうしたシナリオでの再生は不可能なわけです。

そもそも統一ユーロの大矛盾とは、同じ通貨を各国が使って、ECB(欧州中央銀行)が統一した金融政策で金利をコントロールしているのに、財政政策は各国の自由意志に拠っていたことにあります。こんな仕組みは本来ムリ筋だったのです。なのでPIIGS各国はいずれも気持ちよく借金で放蕩してしまって、そのツケが一気に噴出したのです。
さて、今回の危機を契機として、ユーロ圏は統一通貨ユーロ存続を軸に、今ある問題解決に向けて新たなる体制への進化を目指すと考えられます。そもそもユーロ導入の最大目的は、米国一極支配構造への対抗軸としての欧州復活であり、そのプロセスとしての経済的統合だったのです。

そして噴出したシステム上の欠陥を是正する抜本策として、欧州共同債構想へと動き出すでしょう。これは各国が必要な資金調達を、その国の国債ではなくユーロ圏全体の信用力と財政規律の中で、欧州共同債発行によって賄っていくという仕組みです。これによって無秩序な借金が勝手には出来なくなる、つまり財政政策の一体的管理体制が可能になるのです。

経済的に完全な欧州単一市場が実現すれば、その先には欧州合衆国構想が見えて来ます。これは経済のみならず政治的統合にまで進むことで、今ある国家という枠を本当に取り去った、大欧州連邦国家の誕生です。この姿こそが、欧州に再び覇権を取り戻そうという欧州人全体の抱く野望の体現でありましょう。
ざっと5億人もの人口を抱え、ドイツが有する強力な国際競争力をエンジンに、アメリカ合衆国を凌ぐ経済力と政治力を手中に収め、再び成長欧州を実現させる!そんな壮大なる目標へと、本気で構造転換を図っていくであろうと予想しています。

その時、世界の中の日本の位置付けはどうなるのか?そこまで想像力を働かせて、私たち日本人は21世紀の新たな国造りを見据えて行かねばならないのです。次回はグローバリゼーションの渦中で漂流する日本の課題と、これから目指すべき姿を考察してみましょう。

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